ラグジュアリーウォッチと高級時計が必ずしも同義ではないことも事実だ。もちろん重なる部分はあるにせよ、ラグジュアリーウォッチが高級時計でもあるかどうかは、その時計を製造するためにどれだけの注意と技術と時間が注ぎ込まれたかで決まる。
世の中にはよい時計が非常に多く存在するが、本当の意味で高級な時計となると驚くほどその数は限られる。そしてほかの分野と同様、高級時計を定義する基準がある。少し前にコメント欄でオートオルロジュリーという単語を使ったところ、この単語に対する好奇心と混乱が入り混じった反響があった。私にとって、よい時計であるかどうかを問うことはその時計がどのようなテーマをもつ時計として意図されているのか、そしてその意図をどれだけ満たしているのかを問うことを意味している(視認性の低いダイバーズウォッチはこのカテゴリーの不条理を皮肉ったポストモダン的な作品としては成功しても、ダイバーズとしては失敗作だと評価するように)。
しかし、狭義には時計の高級感(または超高級感?)は最もよく議論されるが、最も評価が難しい時計製造の側面のひとつである“仕上げ”に関する一連の基準によって評価される。
そして、ここにきてようやく、より確固たる根拠を示すことができそうだ。高級ムーブメントの仕上げの基準は各時計メーカーが使用する仕上げの定義によって多少は変わる。例えば、イギリスの時計メーカーでは装飾の種類がスイスとは大きく異なる場合がある。しかし基準自体、スイスの高級時計を例に挙げると装飾の種類ごとに確立されている。