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ヒートアップするパテック フィリップの現行コンプリケーションモデル

パテック フィリップのコレクションには“ノーチラス”や“アクアノート”に代表される、不合理な熱狂の対象となる超近代的なスポーツウォッチが存在する一方で、Ref.2499やRef.1518、Ref.2523のような希少なヴィンテージウォッチも存在する。しかし、私が思うにパテック フィリップの現行コンプリケーションウォッチ関するオークションでの実績は、これまで比較的奮わなかったのではないだろうか。オンリーウォッチのために作られた一点モノは別として、パテックの世界では、この分野の時計は流通市場ではかなり急落する傾向にあった。それが少しずつ、しかし確実に変わり始めているのだ。

「上げ潮はすべての船を浮かせます。すべてが高くなって、すべてのものが上昇しているのです」と語るのは、Wind Vintageの経営者でHODINKEEの元寄稿者でもあるエリック・ウィンド(Eric Wind)氏だ。「ここから下がることはないだでしょう」とも見ている。

この成長は特定のパテックのコレクションや腕時計にはほとんど関係ないように見えるが、パテック フィリップ特有で、私が特に興味を持っている特定の分野に焦点を当ててみたい。年次カレンダーである。1996年にパテックが発明した年次カレンダーは、ほかの高級時計メーカーや中堅時計メーカーにも広まったが、今でもパテック フィリップの定番として結び付けられる機構だ。

年次カレンダーは官能的なコンプリケーションではない。チャイムが鳴るわけでも経過時間がわかるわけでも、そしてトゥールビヨンのように踊るわけでもない。しかし機能的には非常に優れており、パテック フィリップファミリーに若い顧客を呼び込むことを目的としていた。当然ながら長年にわたってデザインされてきた年次カレンダーは同ブランドのほかの複雑カレンダーモデルに比べてやや冒険的である。しかし、ここ1週間のオークションでさまざまなモデルが出品されているところを見ると、そのような時代は終わりつつあるかもしれない。サザビーズでは SSにティファニーのサインが入ったRef.5960/1A ブラックダイヤルが25万2000ドル(約2890万円)で落札された。フィリップスではRef.5905P-010が6桁(10万)ドルの壁を越え、クリスティーズではRef.5960Pのペアがエスティメートの上限額の壁を越えて落札された(こちらとこちら)。さらにフィリップスでは同じRef.5960P-01が2万ドル以上の高値をつけた。保守的な年次カレンダーの個体でも、エスティメートの上限額を超えて取引されたのだ。

もちろん、年次カレンダーがすべてではない。11月のクリスティーズ香港でのRef.5950/1A-011とRef.5013R-014の結果を見れば、それがよくわかる。しかしパテックのコンプリケーションは現在のところ、健全で持続可能なペースで上昇傾向にあるようだ。

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